市場カバレッジ戦略とは?市場を絞って効率的にマーケティング!

市場カバレッジ戦略とは?

マーケティングのSTP戦略では、多様化した消費者のニーズに対応するため、市場を細分化してから、自社が標的とするべき市場を選んでいく、ターゲティングを行います。

市場を絞らず、みんなを対象にして作られた商品やサービスは、結局、誰にとっても欲しいと思えない商品やサービスに、なりがちだからです。

市場を選ぶ前には、ます市場を細分化していきます。その後、それぞれの市場を「規模」、「成長」、「競合状況」、「参入コスト」などの基準で、それぞれの市場を評価していきます。

評価をもとに、どの市場を選ぶべきかを選択していきますが、選ぶ市場は1つだけがいいとは限らず、複数の場合もあり得ます。

自社が標的とするべき市場の範囲を、どの範囲にするのかを決定するのが、「市場カバレッジ戦略」です。

 

市場カバレッジ戦略の種類とは?

市場カバレッジ戦略には、「無差別型マーケティング」、「差別型マーケティング」、「集中型マーケティング」、の3つのマーケティングがあります。

3つのマーケティングには、どのような違いがあるのか、どのような場合に適したマーケティングなのか、比較しながらご説明していきます。

 

無差別型マーケティング

「無差別型マーケティング」とは、年齢や性別、関心などで商品を変えることなく、単一の商品を無差別に、大量に市場に出す戦略です。

市場を細分化してみても、実際にどの市場の顧客も同じ商品を欲しがる、という場合には「無差別型マーケティング」が可能になります。

この場合には、細分化された市場の違いよりも、共通するものに注目して考えていきます。効率よくマーケティングできる、というのが「無差別型マーケティング」のメリットです。

この考え方は、典型的なマス・マーケティングの考え方であり、消費者のニーズが多様化した現代では難しくなっています。

 

無差別型マーケティングの事例

「無差別型マーケティング」で成功した企業には、コカコーラ社があります。1923年にコカコーラ社の社長であったウッドラフ氏は、「いつでも、どこでも、だれとでも」というキャッチフレーズで、コーラ飲料を販売しました。

このキャッチフレーズは、典型的なマス・マーケティングの考え方です。コカコーラ社はコーラ飲料という1つの製品のみで、マーケティングを行ったのです。

「無差別型マーケティング」は、大々的な広告で多くの人々に告知するため、知名度が高いという特徴があります。

 

差別型マーケティング

「差別型マーケティング」は、細分化した複数の市場に、それぞれの市場向きの商品を投入する戦略です。

それぞれの市場に、それぞれ別の商品を提供していくイメージです。複数の市場を対象として、複数の商品を開発・提供していきます。

例えばテニスラケット製品では、プロ向けテニスラケット、趣味向けテニスラケット、中高生向けテニスラケット、小学生向けテニスラケット、幼児向けテニスラケット、などとターゲット別の商品を提供します。

理論的には、最も適切なマーケティング戦略です。しかし、複数の市場や商品に対応していくためには、広告費や管理費など多くのコストがかかります。

どのくらいの数の市場を対象にすべきかは、コストが見合うかどうかを検討しながら、慎重に決めていく必要があります。

資金や人材が豊富でないと、どの市場も中途半端になりやすいため、大企業向けの戦略といえます。

 

差別型マーケティングの事例

「差別型マーケティング」で成功した企業には、トヨタ自動車があります。トヨタ自動車は、レクサスのような高級車から軽自動車まで、多彩なラインナップを誇ります。

ビジネスマンに向け営業車や福祉用の車両、エコに関心のある層に向けてはエコカーを提供しています。

資本力を生かして、さまざまな顧客のニーズに合う自動車を開発しているため、典型的な「差別型マーケティング」と言えます。

 

集中型マーケティング

「集中型マーケティング」は、1つ(もしくは少数)の市場を選び、その市場に最も適した商品を集中して投入するという戦略です。

特定の市場に限定する代わりに、消費者のニーズや好み、特性をリサーチして、商品をとことん磨きぬいていきます。

その市場や商品に関しては、どの企業にも負けないという状態になれば、他企業も参入ができす、高いシェアを実現できる可能性があります。

経営資源が限られている中小企業は、「集中型マーケティング」が望ましいと言えます。経営資源が限られていても、市場や商品を特定して注力することにより、高い利益効率を得られる場合もあります。

ただし、市場を1つに絞るため、どの市場をターゲットにすべきなのかは、慎重に検討する必要があります。

 

集中型マーケティングの事例

自動車業界の場合には、「集中型マーケティング」で成功している企業は、スズキ自動車やダイハツです。スズキ自動車やダイハツは、軽自動車という市場に特化して、マーケティングを行っています。

大型自動車、軽自動車、高級車など、自動車の種類ごとに顧客層は異なり、ニーズも異なります。軽自動車という市場に特化することで、軽自動車の顧客のニーズを細かく把握できるため、ニーズに最適化した車を開発できるのです。

その結果、軽自動車市場では、スズキ自動車とダイハツが首位を争うシェアを占めています。軽自動車と聞くと、スズキ・ダイハツを連想されるような状態になれば、「集中型マーケティング」では成功です。

 

市場カバレッジ戦略で注意すべきポイント

市場カバレッジ戦略を進めていくうえで、考慮したほうがいいポイントがいくつかあります。ひとつは、自社の資本力や原料調達の見通しなどの確認です。

理論上の戦略ではなく、実行できる戦略であるかどうかを、検討しながら進めましょう。途中で資本力が不足する場合や、世界情勢の変化により、原料の調達が困難になる場合もあります。

代替品の調達方法や、セカンドプランなどを策定して、不慮の事態にも対応可能な戦略を立てましょう。

また、市場カバレッジ戦略の「集中型マーケティング」の場合には、1つの市場で成功した場合に、類似の市場にも展開が可能かどうかも検討します。

他の市場には、拡大が不可能な商品かどうかを見定めておくことは、長期的な戦略を立てる上では重要になります。

 

 

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